ユーザーインタビューの後どうする? 発話録からインサイトを探る「KA法」を試してみた

はじめに

JCB デジタルソリューション開発部 デザインチームの入尾野です。
デザインチームは、アプリチームのUX/UIデザイン面について横断的に支援することを目的に、2022年7月より立ち上げたチームです。

インタビューした後、どうしてますか?

突然ですが、開発や企画を推進する際、ヒアリングやインタビューを実施されたことはありますか?
インタビューをしてみたものの、得られたデータをどのように分析したらよいのかと悩んだ経験のある方もいらっしゃるかもしれません。
デザインチームでは、明文化されていなかったデザインプロセスをガイドラインとして言語化する取り組みをしており、初案ができた段階でアプリチームのメンバーに対してヒアリングを実施しました。
本記事では、そのヒアリングで得られた発話録を「KA法」と呼ばれる手法で分析した取り組みについて紹介します。

「KA法」 とは

「KA法」とは、ヒアリングやインタビューで得られたユーザーの言葉や行動・体験などの定性的データを分析し、本質的な価値やインサイトを明らかにしていく手法です。

分析手順

ヒアリングは、以下の2点を明らかにすることを目的として、複数のアプリチームのプロダクトオーナー(以降、POと記載)を対象に実施しました。
・現状の開発工程やデザインプロセスでの課題感
・デザインプロセスガイドライン初案の改善点はどこか
ヒアリング後、KA法による分析のために行った手順は以下の通りです。

1. 録音(録画)データの書き起こし

POから発話された言葉をまずテキストにすべて書き起こします。

2. KAカードにまとめる

KAカードとは、1つの行動や事実について以下の3つの軸でまとめたカードのことです。

①出来事…実際の行動や事実
②心の声…行動や事実に対する心の声
③求めている価値…出来事と心の声の背景にある価値

KAカードの例
KAカードの例

書き起こしたテキストから、実際の行動や事実を①出来事の欄に書き出し、次に②心の声、③求めている価値という順で埋めていきます。
KAカードの書き方が難しい・分からないというような場合は、可能であれば、1枚書いてみた後、経験者や、UXリサーチャー・UXデザイナーなどの専門家にレビューしてもらうと良いと思います。

3. KAカードをグループ化する

発話録から25枚のカードが得られました。
25枚のカードでは情報量が多すぎて、課題や改善点を見出すのが難しいため、ここからさらに、求めている価値が共通しているものを軸として、カードをグループ化(抽象化)していきました。
※カードの詳しい内容についてはぼかしを入れております。

KAカードをグループ化する

4. 分析する

手始めに、各グループの根底にある問題や求めている価値を明文化しました(画像の紫色の付箋部分)。
そこから、原因や要求、焦点となるキーワード、解決するためのアイデアとその効果についてチームで書き出していきました。

グループ化したカード群をラベリングし、原因や要求、解決策とその効果を分析した資料

思いつく限り書き出せたら、次は解決策としてのアイデアが、組織/現場、効果の大小という4つの象限に分けた場合、どこに当てはまるか、プロットしていきました。

組織/現場レベル、効果の大小という2軸を置いた4象限に、解決策をプロットしていき、取り組むべき解決策を分析

5. 結果

ヒアリングの目的の1つであった「現状の開発工程やデザインプロセスでの課題感を明らかにする」という点については、デザインプロセスを明文化し、標準的な開発プロセスを立案していく取り組みは、アプリチームのPOが抱える課題の解決に寄与する可能性が高いということがわかりました。
また、副産物として、汎用的なデザイン資材の整備やプロダクトの評価観点の定義など、デザインプロセスのほかにも取り組むべき課題が明らかになりました。

2つ目の目的である「デザインプロセス初案の改善点を明らかにする」という点についても、KAカードによる分析を通して、開発プロセスの全体像やプロセスにおける各工程での目的・アクションを示す必要性が明らかになりました。

おわりに

発話録という散漫としたデータを抽象化していくことで、共通する課題や求めている価値は何かを見い出し、明らかにしていく取り組みについてご紹介しました。
開発や企画に携わる方々の参考になれば幸いです。

最後に、JCBでは我々と一緒に働きたいという人材を募集しています。
詳しい募集要項等については採用ページをご覧下さい。


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